コイゴコロ
それから数分後、私達1年はまだ部活見学という段階なので、
部活の先輩よりも早い時間に帰された。
トボトボと廊下を歩いているが、隣に城山君が居るので時々すれ違う女子が騒ぐ。
何だか、王子様のお付の家来になった気分だ。
それか、お祭りのお神輿を背負って歩いてる気分。
「城山君はどこか部活入らないの?」
どこかに入るなら私に着いて美術部に来ないで、自分の見学に行った方が良いと思って話を切り出す。
「……………。」
だが、城山君からは何も返答が無い。聞こえてないんだろうか…
「しっ城山君は―」
「『優』って呼ばないと返事しなーい」
…………。
「ゆ…優君はどこか部活入らないの?」
「俺は入らないよ。こうやって有紗の隣で絵を描いているのを見れれば良い」
私の絵…?
そういえば、美術室でも何もせずただ私の絵を見て楽しんでいた。
絵が好きなのだろうか…いや、それなら自分で描きだしたり、周りの人の絵も見に行ったりするだろう。
彼は私だけの絵を見ていたのだ。
「ねえ有紗」
下駄箱近くに来ると、城…優君は私を呼んで立ち止まった。
私も釣られて立ち止まり、優君を見上げる。