コイゴコロ
男子は私の言葉に飽きれた顔でため息を吐くと、私の顔を見て微笑んだ。
「計算高くないとは言ってないよ」
「やっぱり何か見返りを求めてるんじゃないですか!イケメン怖い!」
男の子の言葉に言われた事に身体がブルッと震える。
どんな裏があるのだろうか。
「そんな構えなくて良いから。今は俺の優しさだと思って使って。
見返りって言うなら……ここに入学してからパーカー返してくれればいい」
「え……」
「お前ここの受験したんだろ?なら、春から同じ学校の同級生な訳だ。
その時に俺のところまでパーカー返しに来てくれれば、それで良いから」
「いや、受けたには受けたけど、合格かはわかりませんので……っておおい!!」
男の子は、私が話している途中で『じゃあな!』と言いながら外へ飛び出していった。
コートのフードを被って傘を差した男の子は、白い雪の中へ消えて行った。
残された私は、大きなパーカーを被ったまま唖然としていたが、
諦めのため息を吐くと、雪の中へ入った。
パサパサと頭や肩に掛かる雪も凍えるような寒さも嫌だけど、
黒いパーカーから香る洗剤の良い匂いが私を包んでいて、
何だか少し心が温かくなった。
「イケメン…怖いな…」