コイゴコロ
「失礼しまーす」
静かな校舎。
夕日が差し込む廊下を静かに歩いて、1年1組の教室を静かに開ける。
もう放課後になってから1時間以上立っているため、教室には誰も居ないと分かっているが、念の為恐る恐ると入る。
ガランとした教室に、飽きっぱなしの窓から春の香りが流れてくる。
事前に晴美から聞いて、城山君の席は分かっている。
廊下側から三列目の一番後ろ。
他の席と変わらない普通の机と椅子だが、きっと城山君が座ると女子には違って見えるのだろう…
その席の椅子の上にパーカーの入った袋を置く。
手元から袋が無くなった途端に、精神的に身体が楽になったような気がした。
何だろう。心配事から荷が下りた時のような…何かを達成した時のような…
何とも言えない安心感。
これで、私とあのイケメンとの関わりは一切なくなる。
別にイケメンが嫌いとか悪いとかは思わないけど、
イケメンというのは人よりも裏がありそうで、ガキ大将と同じくらい近づきたくない。
誰も、怖い人と関わって痛い目に会いたくないだろう。
それと同じである。
私は、親や先生に勧められて入ったこの学校で、
友達とワイワイ騒いだり、趣味に走ったり、
何の障害も無く楽しく過ごしていたいんだ。