裏面ワールドトリップ
ハウスドルフさんの受信機に、何らかの指示があったらしい。


彼はインカムマイクに向かって「了解」と告げると、車のドアを開けた。



「姫が見付かった。

真琴、行くぞ」



――ついに、この時が来た。



車を降りて、透明な大地を踏む。


どこまでも透き通る水晶の地面は

覗き込むとそれこそ、私がいた〈裏側の世界〉が見えるようであった。



「それ、持って行くのか?」


ハウスドルフさんが、私の手にしっかりと握られたウイスキーの瓶に目を遣る。


「……駄目、ですか?」


「いや、邪魔にならなければいいんだが」


「大丈夫です」
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