裏面ワールドトリップ
絵画や彫像で飾られた広いエントランスホールを歩いていると、誰かがハウスドルフさんを呼び止めた。


「中尉、どこに行ってらしたんですか。

メンガー大尉が探してました」



ハウスドルフさんの部下らしい。


細面に切れ長の目、くっきりとした鼻筋

モデルか俳優としても通用しそうな顔立ちの、若い軍人である。


「あぁ、わかってる。レニー少尉、これ」

と言って、ハウスドルフさんは若い軍人にシャーフガルベ薬のカゴを手渡した。


「すぐ出動命令が出るだろうから、お前たちで分けろ」


「ありがとうございます。

しかしローゼさん、よくこんなに下さいましたね。

さすが中尉」


「非常時だからだろう。

そう言えば王妃のお姿を見掛けんが」


「礼拝堂にいらっしゃいます。

先程からずっと、姫のご無事をお祈りしてらして」


「そうか……」



それからハウスドルフさんは私の方を振り向き

「こっちだ」

と言って、さっさと歩き出した。
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