崖っぷちトレード
「金を盗もうとしている訳じゃ、ないよな。財布開けるなり運転免許証出して人の名前呟いて…。…慶兄、一体どうしたんだ?」


重い空気の中、つかさが口を開く。その顔は、猜疑心というよりも困惑に満ちている。


―真実をいうなら、今しかない。

だが、真実を言ったところで信じてもらえるのだろうか?

他人の人格が他人の体に入るなんて、現実的に考えてあり得ない。


今ならまだ、誤魔化すのも不可能ではない。


―選択を、迫られる。
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