私たち。
突然『遺族』となった瞬はもちろんのこと、『加害者家族』となった優也も辛かった。
いや、親友の親を殺した男の息子だ。
瞬の痛みなど目じゃないだろう。
「これから俺は、どうしたらいいんだよ」
苦しくても、俺達は一生十字架を背負って生きていく。
『覚悟』
額を大玉の脂汗が流れ落ちる。
“親友の、親を殺した男の息子”
瞬の親父は、死ぬとき何を考えたんだろう?
なんで、あんな親父に金を貸したのか?
もぅ、今になっては聞けない。
『死人に口なし』
まさか、こんな時に使うなんて思ってもみなかった。

それから日々はめまぐるしく過ぎていった。
瞬の親父の葬式が終わり、周りも落ち着いてきた頃、刑務所から連絡があった。
「はい、優也ですけど」
「あ、優也....くん?
実は........」
親父が死んだ知らせだった。
務所で首を吊った、ドラマなんかでよくある自殺。
でも、こんなことが実際に起きるなんて思ってもみなかった。
未だに信じられない。
「何でアンタだけが死ぬんだよ!
俺達が、どんな思いで毎日っ....!!」
楽な方を選んだ親父が許せなくて、遺体を目にして思わず叫んだ。
悪いとか常識なんかより、今までの何日かの日々が思い出された。
窓から家に石を投げられたり、玄関のドアに誹謗中傷を書いた張り紙を貼られた。
親父のせいで。
それだけじゃない。
すれ違えば隠そうともせず悪口を言われ、家に帰ると電話は留まるところを知らず鳴り響く。
出ても、声が聞こえることは滅多にない。
時々聞こえてきたとしても、死ねとか消えろとかの中傷や冷やかしだけだった。
そんな俺達の苦労も知らねぇで、楽な道を選んで死んだ親父がどうしても許せなかった。

そんなことがあっても、日々は何気なく過ぎていく。
数ヶ月も経つと、周りもだんだんと事件のことを忘れていく。
周りの人の記憶からは消されても、俺達当事者は忘れることなどできない。
皮肉なくらい、時が経つのは早かった。
それに、優也の周りの悪友は優也の父親のことを知っても一言の冷やかしくらいで変わらず付き合った。
事件以来、優也のタバコの量が増えた。
もちろん女遊びもより派手になり朝帰りを繰り返すようになった。
酒を飲む頻度も増えたが母親は何も言わなかった。
というより、言えなかった。
優也は、母親に暴力を奮うようになっていたからだ。
それでも母親は、自分に責任を感じていた。
自分を責め、どんどん疲弊していった。
目の下のクマは濃くなり、日を追うごとに痩せ細り見るからに窶れていった。
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