イフ*シンドローム【短編】
「あーもう京太のくせにむかつくー!」
「いってぇー角直撃したぞ角!」
涙目になりながら言う京太を見て、あたしはベーッと舌を出した。
「つーか、お前最近“もし”ばっかり言ってるよな。いい加減飽きてきたんだけど」
「何よー!良いじゃん別に。暇なんだからー」
ふと周りを見渡すと、京太の部屋なのにあたしの私物がたくさん置いてあった。
知らない間に増えすぎちゃったな……。
何か、ほぼあたしの部屋って感じだし。
ベッドの上で寝転がりながら、自分の置いた私物を眺めていると、ある小さい本が目に入った。
「じゃあ、京太。最後に聞かせてよ」
「何?」
「もし明日、世界が滅亡するとしたら京太は何をする?」
『もしあしたせかいがなくなったら』
それは、あたしが幼稚園の頃に書いた小さな本だった。
その本は京太が何故か気に入ってしまって、あたしがあげたものだった。
自分自身も、どんな内容だったかあまり覚えていない。
前に「見せて」と言ったけれど、京太はあたしがそれを見ることをかなり拒否した。あたしの本なのに……