プリンセスの憂鬱【BL】(※仮)
 
「──じゃ、行って来る」

「おう。気を付けてな」


 仕事に出掛ける恭介を見送るのも、何だか習慣になってしまっている。

 俺はというと、バンド活動を続けつつ気ままにアルバイト生活。

 知り合いの中古レコードショップと、これまた知り合いがやってるショットバーとの掛け持ち。

 知り合いがオーナーってのはライヴが有る時とかに融通が利いて凄く助かる。

 俺のバンド活動を応援してくれてるのが凄く有難いんだ。

 バイトは午後からだったり夜間だったりが多いから、明るいウチは寝たりのんびりしていることが多い。

 恭介が出掛けてしまうと、何だか室内が急に静かになったような気がした。

 テレビの音も、洗濯機が動く音も、どこか遠くから聞こえているような気がして……。


「……っ」


 不意に、アイツの顔が脳裏に浮かぶ。

 聞こえてくる筈の無いアイツの声まで蘇ってくる。


「……くそっ、何なんだよっ!」


 思わず吐き出して、フラフラしながら寝室へと向かった。

 何か、気を紛らわせないと……。

 何か……、そうだ、音楽……!

 思い立って床に落ちているスマホを拾い上げ、ホームボタンを押すと、着信と留守番電話がある事を知らせるメッセージが表示されていた。
 
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