プリンセスの憂鬱【BL】(※仮)
知らない番号からの着信に、スマホを持つ手が震える。
嫌な予感しかしない。
けれど、無視することも出来ず、俺はそっとスマホを耳に当てた。
『──真一です』
数年振りに聞く懐かしい声に、どくんと鼓動が反応する。
『久し振りだな。元気にやっているか? 昨日、伸康と会ったみたいだけど……大丈夫か?』
「──……ッ!?」
その一言に、全身の力が一気に抜けて、スマホが床に落ちた。
真兄は、俺とアイツのことを知ってる!?
そうに違いない。
けどあの頃、真兄は家に居なかった筈だ。
それなのに、なんで……。
震える身体を抱き締めて、俺は力なくベッドに凭れる。
真兄が知ってるってことは、親父も知ってるのか?
知ってて、アイツを俺の前に寄越したのか?
親父は仕事熱心で真面目な人だ。
そんな親父がアイツとのことを知ったら……知った所でどうなるでも無いか。
実際俺は、高校時代ロクに勉強もしないで毎年留年ギリギリだった。
それでも、一度だって何かを言われた事は無い。
我関せずを決め込んでいるかのように、親父は仕事に打ち込んでいたから。