プリンセスの憂鬱【BL】(※仮)
 
「ヒメノさんて、凄い視力悪いとか?」

「人並みだと思うけど?」

「あの度数は人並みって言えないよ。裸眼じゃ夜道は歩けないでしょ」


 付き合いが長いと便利なようで不便だ。

 別に視力が悪い事を隠したい訳じゃないけど、言いふらしたい訳でも無い。

 けど実際問題、このままじゃ電車に乗る事すら危ないのは確かだし、駅からアパートまでの夜道も見えないだろう。


「スタッフに話しておくから、ヒメノは朔杜さんに送って貰いなよ」


 再び陣が溜息交じりに言う。

 ……ったく、コイツは俺のオカーサンかよ!?

 のんびり煙草を燻らせる朔杜をチラと見遣ると、裸眼のせいで表情までは見えないものの、大袈裟に溜息を零したのは分かった。

 バカにされてるみたいで何だかイラつく。


「荷物運んでやるからさっさと片付けろよ」


 上からの物言いに更に苛立ちを感じながらも、俺は散らかった私物をトランクに押し込んだ。
 
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