プリンセスの憂鬱【BL】(※仮)
 
「……っ、陣! 律! また後でな!」


 朔杜がどこに車を停めてるか知らない上に、あいつがわざわざライヴハウス前まで迎えに来てくれるとは思えない。

 慌てて朔杜を追い掛けると、薄暗い廊下に出るなり俺は黒っぽい服を着た誰かにぶつかってしまった。


「──っ、悪ぃ、大丈夫か!?」

「ヒメノさん!? 今日のライブお疲れ様です! 凄く良かったです!!」


 ……スタッフ?

 対バンのメンバー?

 それとも、ファン?


「あ、ありがとな」


 薄暗い上に照明の逆光と重なって……声に聞き覚えがある様な気もするが、誰なのか全く分からない。


「ごめん、ちょっと今急いでるんだ」


 そいつを避けて進もうとすると、待ってください、と腕を掴まれた。


「あの、コレ!」


 小さな紙袋を差し出され、反射的に俺が受け取るとそいつはぺこりと一礼してそそくさと行ってしまう。

 慌てて声を掛けるも、届かなかったみたいだ。

 差し入れか何か、だろうか。

 顔も名前も分からないんじゃ、お礼のしようがない。

 手に残された紙袋に視線を落として溜息を吐くが……それどころじゃないことを思い出した!
 
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