プリンセスの憂鬱【BL】(※仮)
 
 薄暗い通路を感覚だけで走り抜けて、地上への階段を駆け上がる。

 街灯や建物の照明にに照らし出される街は普段なら明るく感じられるのかもしれないけど、俺の視界にはボンヤリとしか映し出されない。

 ひとつひとつの照明がボヤけて広がって……とてもじゃないけど、独りで歩けそうにない。

 朔杜の姿を見つけても判別さえ出来ないだろう。


「……うわ、最悪」


 思わずそう呟いた時、ライヴハウス脇の道から1台の車がやって来た。


「早く乗れ」


 突然聞こえた声に導かれるまま、俺は車に近付く。


「悪いな。こんなに見えないなんて思わなかった」

「目隠しプレイでもしてる気分か?」

「ばーか、んなワケあるかよ」


 茶化す朔杜を適当にあしらって、助手席に乗り込む。

 俺がシートベルトを着けるのを待ってから、朔杜の車──赤いSUV型車は滑らかに夜らの街を走り出した。
 
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