不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 「すいません遅くなりまして。木暮を殺したの犯人が逮捕されたとききまして……」
そう言いながら、木暮敦士の元マネージャーと言う人が入って来た。

勿論俺とは初対面のはずだった。
でも、何処かで会った人だった。

俺がじろじろ見ているのが気にくわないのか、その人は俺を睨み付けていた。

俺はますます、解らなくなっていた。
確かに何処かで見た顔だった。




 (――ボンドー原っぱの時のように思い出せねー!!)

俺は焦っていた。


(――ん。
ボンドー原っぱ!?

――あー、あれだ。あの人だ!!)


「刑事さん、この人が木暮の兄貴を殺したの真犯人です!!」
俺は大声で叫んでいた。


さっき垣間見たゴールドスカルの意識。
鏡に映ったストーカーの男性は、女性が男装した姿だった。


そしてそれは俺の目の前にいるマネージャーだったのだ。


木暮敦士はこの人を男性だと思い込んでいたのだった。

ノーメイクだった。
でも目が同じだったのだ。


従業員用エレベーターの鏡に、慌てている彼女の姿がはっきりと写っていたのだった。


それはさっき俺を睨み付けた目、そのものだったのだ。




 女は化粧一つで化けると言う。
それは、このマネージャーのことではないのだろうか?


常に一緒にいるマネージャーをMAIのストーカーだと木暮の兄貴は思ったんだ。
普通なら解るはずだ。
俺は単純にそう思った。


でも何故か気が付かなかった。
それはきっと、木暮には死神としての顔を見せていないからなのだろう。
彼女は恋しい人を手に入れるためには殺人さえも犯す、死神なのだろうと俺は思った。


 ゴールドスカルのペンダントヘッドを衝動買いしたMAI。
それを木暮敦士が見つけ身に着けた。

MAIのプレゼントだと思い込んでいたのだ。


MAIのお腹にいた自分の子供をマネージャーが殺したことを木暮敦士は知らずにいた。
そもそも、MAIが妊娠していた事実も知らされていなかったのだ。


そんな時にあのデパートでの新曲発表会の当日になったのだった。


マネージャーは木暮敦士を見張っていた。
本当は片時も離れたくなかったのだ。


でもその時、ゴールドスカルのペンダントヘッドを見て掴んでしまったのだった。


スキンヘッドだったから掴み易かったからだ。
でもその時、マネージャーはMAIの掌に居た流れた胎児を思い出した。


マネージャーは半狂乱になって、それを引いてしまったのだった。


でもそうしている内にエレベーターは閉まり移動をしてしまったのだった。
気付いた時はもう遅かったのだった。


慌てて降りてきたマネージャーは、木暮敦士の遺体を見てしまった。
愛する木暮敦士の命を奪ったゴールドスカル。
その時、この凶器を隠蔽することに決めたのだった。




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