不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 俺には昔から虫の知らせと言われる物と出くわしていた。


所謂。
直感、やま感、第六感だった。


そう……それに霊感。

だから、このコンパクトだって見つけ出すことが出来たのだった。




 まず朝からの行動を考える。


(――オハヨー、は言った。

――好きだよ、は言えなかった。

――愛している、なんて勿論……言えなかった。

――でも……言えば良かった!

――言いたかった!)


みずほは試合のことを気にしていた。
本当はレギュラーになってほしくないらしい。

背が小さくて小回りが利く俺は、中学ではいつもエースナンバーを付けていた。

人気もそこそこあったらしい。


(――ま……
俺が言うのも何だけど、化粧すれば女性に見える顔立ちだからな)


それでも頑張ってのキスをくれた。

俺には最高の恋人だった。




 俺はこっそり、コンパクトをポケットに隠した。


《死ね》

それから感じるものは完全たる悪意だった。

俺はただみずほの名誉を守りたかったのだ。


俺がヤキモキを焼く位、誰にでも優しかったみずほ。

彼女に恨みを抱いている人が居る。
その事実を、知られなくなかった。


奇しくも叔父さんと同じ傷みを背負わされた俺。


(――同じように生きて行くのか?

――みずほー!!

――教えてくれー!!)




 俺は携帯のメールが気になった。
みずほからのSOSの直後に来た、自殺と断定していたメールが……


(――何で解ったんだ?

――飛び降りたからか?

――でも……それにしては早かった)


俺はそのメールとコンパクトに
《死ね》
と書いたのは同一人物ではないのかと思った。


確たる証拠がある訳ではないが、おれの直感がそう判断した。


叔父さんの探偵事務所のアルバイトの時だって、幾度もそれで難を逃れてきた。

だから、確かだと思った。


もう一度メールを確かめてみる。


――岩城みずほが学校の屋上から飛び降り自殺したらしいよ――

その文面は、俺の記憶と変わらなかった。




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