不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 俺はサッカー部のグランドにいた。

監督に暫く休部することを伝えるためだった。


(――みずほの事件が解決するまで、サッカー休ませてくれるかな?

――今のままだとサッカーどころじゃない!!)

体も心も悲鳴を上げそうだった。


俺からサッカーとみずほを取り上げたら何も残らない。

解ってはいても……


隣のクラスの橋本翔太がレギュラーの座を射止めたと噂では聞いていた。

でも今はみずほのことで精一杯だった。


(――監督が聞いたら怒るかな?)

俺は内心では、ドキドキしていた。


「おっ、磐城。彼女のこと聞いてるよ。大変だったな」

俺が挨拶する前に、監督が言ってくれた。
その好意が嬉しくて、俺は深々と頭を下げた。




 「ま、頑張れや。俺はお前に期待しているからな。本音を言えば……ま、気にするなよ。お前にもう少し身長があれば申し分ないんだけどな」

痛いとこを監督は突く。


「俺、やっと百六十越えたんです。これからもどんどん伸びて行くつもりなんですが……」
俺は肩を落として言った。


「ま、気にするな俺はもっと低いから」

監督は俺を慰めるように言ってくれた。
俺は頷きながら、監督の一言一言に励まされる自分に気付いていた。


教室に戻る前に、グランドに一礼をする俺。


「その精神を忘れるなよ」
監督が言う。


何時もありがとうと言う心。
サッカーにも、グランドにも、仲間にも……

監督は何時も教えてくれていた。


(――そうだ。
今まで気付かなかった。

――それ程監督が大きい存在だったんだ)

その時俺は思った。
監督のような人になりたいと。


(――俺って……
なんて器の小さな人間なんだろう)

校舎に戻る途中、監督を見て思った。




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