不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 「みずほのコンパクトに憧れてね。彼氏に買って貰ったの」
有美はそう言いながら、手鏡を使ってもう一度ウインクした。


(――おいおい……
なにもそんなに真似しなくても。

――ヤバい!!
ヤバいよ……
俺、本気になりそうだ!!)

でも有美にはサッカー部のエースが付いてる。

とても太刀打ち出来やしない。


(――みずほ……
お願いだー。俺を助けてくれ)

虫のいいことだとは解っている。

でも俺は必死にみずほに救いを求めた。


(――もし……
本気で惚れたら、俺に待っているのは地獄の日々だけなんだ)


有美はそんな俺を後目に、手鏡を大事そうに鞄にしまった。


誰もが憧れるサッカー部のエース。

その彼女の有美。

馴れ初めなんかは知らないけど、二人の噂は良く耳にしていた。

だから俺も堂々と、みずほと付き合っている事を打ち明けられたんだ。
監督以下、全てのサッカー部員に。

だから有美は俺達の、恋の女神だったのだ。




 俺達はカフェのテラス席に座った。


「転校するの?」


「ママのためかな」


(――えっ!)

と思った。
でも、俺は本当は知っていた。


「先生のためか?」
俺が言うと有美は驚いたような顔をした。


「知ってるの?」

俺は頷いた。


「だったら早い」
有美はそう言いながら、先生のツーショット写真を見せた。

グレーのスーツの女性と紺の上下の先生。


それは……
《イワキ探偵事務所》
の封筒に入っていた。


「誰にも言わないでね。パパ、これを見て心臓麻痺を起こしたの」




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