不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 「叔父さん。奥さんのワンピースって、何着位いあるの?」

俺は殺された叔父さんの奥さんのことは殆ど知らない。

背はきっと高かったんだろう?

だってワンピースが俺にドンピシャサイズだから。


時々叔父さんは遠い目をする。
きっと奥さんのことを思い出しているのだと思う。


俺はこの先、叔父さんのように傷を抱えたまま生きて行くのだろう。

でもまず、みずほを殺された真実に立ち向かわなければいけない。


誰のためでもない。
全ては自分のために。

この悲しみを生きる糧にするためにも。


俺はさっき、みずほの元へ行きたいと思った。
意地もしがらみも全てかなぐり捨てて、みずほと共に過ごせたらこんなに嬉しことはないと思った。

でも……
みずほはきっと許してくれないと思ったんだ。




 「ワンピースか? 数えた事ないなか」

叔父さんはそう言いながら俺の脱いだワンピースとレギンスを、玄関脇にある脱衣籠ごと運んできた。


「これ、歩き辛くなかったか?」


「うん。でも何で今更言うの?」


「いや、ちょっと思い出した事があってね」

叔父さんはそう言ったまま黙ってしまった。


「あれからもう……」
叔父さんは辛そうに話出した。

心なしか泣いているように俺には見えた。




 「あれから……殺されてからもう十年以上だな。確か今年が十三回忌だよ」

「犯人はまだ捕まっていないんだよね?」


「でも殺人の時効が無くなったから、同じには救われたよ」

叔父さんは俺の脱いだワンピースを抱き締めていた。


(――おいおい……)
俺は少し青ざめた。


何時までもそのワンピースを離さない叔父さん。
よっぽど思い出があるなだろう。

俺はそんなやるせなさそうに座り込む叔父さんを初めて見た。

どうやら俺の一言が琴線に触れてしまったらしい。

俺は今……
確実に取り乱していた。



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