不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 俺はたまりかねてみんなの前に出て行った。

先生のいない今、有美を守ってやれるのは自分一人だけだった。


俺は覚悟を決めていた。

既にキューピッド様で
《いわきみずほ》
と出ているのだ。

《まつおゆみ》
の代わりに俺が墜ちるても、問題はない。


(――みずほが……
みずほが待っていてくれるかも知れない)


それでも俺は先生に期待していた。

こっそり打ち合わせた場所に目をやった。


でも先生は居なかった。
幾ら目をひんむいて捜しても、先生の姿形もなかったのだ。




 (――裏切られた!!)

俺はその時、後悔に苛まれた。

百合子と千穂の前に出て行ったのは、先生の存在を確かめることでもあったのだ。


「な、何なの!?」
百合子が慌てる。


「磐城君……何時から其処に居たの……?」
青ざめながら千穂が言う。


「俺は何もかも知っているんだ。二人がみずほを殺したことも」


「何言ってるの!? みずほは自殺じゃない!」
百合子が噛みついた。


俺は録音機のスイッチを押した。




 『ねえ、次に死ぬのは誰にする? だって三連続なんでしょう? 誰が続かなきゃ意味無いと思うのよ』



『そうね。やはり磐城瑞穂君かな?』


『イヤよ。だったらキューピット様に岩城みずほを殺して貰った意味がないもの』


『そうね、それだったら、誰が良いの?』


『うーん、そうだなー。磐城君以外なら誰でもいいわ』


『だったら、最初に戻そうか?』


『最初?』


『そうよ。始まりは有美の親父じやない? だから今度は松尾有美。後追い自殺なら誰も傷付かないから』


『あっ、それがいい。物凄くいいアイデア』


『そうよね。松尾有美だったらきっとみんな大喜びするはずよ。だってあの子サッカー部のエースの彼女じゃない?』


『ライバル何て始末した方がいいのよ』


『みんな喜ぶものね』




< 73 / 122 >

この作品をシェア

pagetop