不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 千穂が泣きながら崩れ落ちる。


「千穂よ! 千穂が岩城みずほからあんたを奪いたかったのよ!」

百合子は全ての罪を千穂に被せようとして、指を差しながら言った。


「嘘つけ! 橋本翔太をレギュラーにしたかったのは一体誰だ!」

おれの放った一言に、百合子は言葉を詰まらせた。


「俺をグランドに行かせないために、たったそれだけのためにみずほの携帯からメールをしたのは誰だ!」

俺は声を荒げた。


見る間に、百合子の態度が変わる。




 「どうして……どうしてその事を……。もしかして千穂!!」
百合子は千穂を睨み付けていた。

でも千穂頭を振った。


「千穂じゃない。俺はみずほから聞いた……みずほの残したこのコンパクトから聞いた」
俺はコンパクトを開けた。

《死ね》
の文字が又揺らいでいた。


「あっ!?」

百合子は思わず息を飲んだ。


自分の手にしていた、有美の手鏡の
《死ね》
の文字も、きっと揺らいでいるのだろう。


でも百合子は開き直った。


「何時までもぐずぐずしない! さあ立って、松尾有美を落とさなきゃ」

百合子は千穂に命令をしていた。




 「いい千穂。松尾有美は自殺よ。良く覚えておきなさい」

百合子が有美の腕を掴んで、柵に押し付けた。
有美は苦しそうな息を吐いていた。


その時、隠れていた先生が飛んで来た。


「先生!?」
千穂が慌てている。

でも一番驚いたのは俺だった。


まさか先生がずっと見守っていてくれたなんて……


(――ごめん先生……
俺てっきり裏切られたと思ってた)


先生は起点を利かせて、鉄製のハシゴで上に登っていたようだった。


百合子は俺を睨み付けていた。


「あんたが……」
百合子はそう言うと、俺の腕を掴んだ。


「いわきみずほと初めから出てたのよね。アンタだって良いってことよ!」
百合子は興奮していた。




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