外道武士
4月14日

谷元穣、船室にて不意に狂暴と化して発狂し死骸を切り刻む。地獄か。人肉食べる気力あれば、まだ救いあり。

4月19日

谷元穣、松田宗助の二名、料理室にて人肉を争う。地獄の鬼と化すも、ただ、ただ生きて日本に帰りたさの一心のみ。同夜、二名とも血だるまで、ころげまわり死亡。

5月6日

久坂船長、ついに一歩も動けず。乗組員十二名のうち残るは船長と日記記録係の私のみ。ふたりとも重いカッケ病で小便、大便にも動けず、そのままたれ流す。

5月11日

曇り。北西の風やや強し。南に西に、船はただ風のままに流れる。山影も見えず、陸地も見えず。船影はなし。あまいサトウ粒ひとつなめて死にたい。友の死骸は肉がどろどろに腐り、溶けて流れた血肉の死臭のみがあり』…

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