外道武士
「すぐに討伐に向かってくれ。無名が出た」

「何…」

その言葉に猛流は向き直る。

何者なのか、外道武士の所属する関所の中でもいまだ議論が交わされている相手。

魔物なのか、悪魔なのか、禁忌の術を習得した魔術師なのか。

分かっているのは、物静かで小鳥や栗鼠と戯れる心優しい一面を持つが、人間は無表情に殺めるという事だけ。

人間には容赦せず、人間が蚊を躊躇なく叩き殺すように、人間を躊躇いなく葬る。

それが無名という『黒の者』。

猛流も一度刃を交えつつも、仕留め損なった因縁の相手だった。

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