外道武士
その男もまた、迷っていた。

『不器用で世渡りが下手な、生きるのが苦痛に感じる者』の一人。

日々鬱屈した感情を溜め込み、吐き出し切る事も出来ず、蓄積するばかり。

やがて彼は命を絶つ事を考え始め、しかし命を絶つ事の苦痛に恐れをなしていた。

死ぬ時まで苦痛に苛まれなければならないという理不尽。

結局真に弱い者は、生きる事も死ぬ事も出来ぬのか。

そんな折に、彼は魅入られた。

死と鬱屈した昏い感情を好む者。

闇から這いずり出た世迷い、『黒の者』に。

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