外道武士
首には縊溝(いっこう。頸部を絞搾した縄索の痕)、左右の手首には躊躇い傷、薬物でも大量に服用したのか口元には吐血の跡。

ありとあらゆる自殺を試みたのだろうか。

腹部には割腹の傷痕まで残っていた。

しかし死なない。

死ねない。

『黒の者』と化してしまったその男は、既に生物ですらない。

物理的な肉体損傷では死なない。

禁忌の力による霊的損傷でのみ、その忌まわしき肉体を灰とする事ができる。

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