外道武士
言葉はない。

振り返り、永久子と対峙する猛流。

黒の外套の猛流と、血に塗れた白のワンピース姿の永久子は対照的だ。

その永久子の口から。

「――――――――!」

悲鳴のような、鳥の鳴き声のような甲高い声が発せられる。

同時に突き出した両手が、伸びる!

ゴギッ、グギッと、関節の外れる音。

それを差し引いたとしても、明らかに常軌を逸した長さに伸びた左右の腕が、数メートルの間合いをとっている猛流の首に摑みかかろうとする!

素早く片手倒立で側転して回避する猛流。

これを見るや。

「――――――――!」

今度は永久子の口の中から舌が伸びる!

舌先のない、先端の切断された舌。

殺害の際に、男達に悪戯に切り取られたものだ。

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