外道武士
薬物に逃げたのも、断ち切れなかったのも、全ては己の弱さゆえ。

それを忘れて尚、迷い出て命に執着し、『黒の者』に成り下がるとは。

「狩るに値する存在だ」

刃を、左手の銀の指輪に擦り付ける。

火打石が火花を散らすかのごとく、刃に灯る青白き炎。

世迷いを斬り裂く調伏の炎。

武士でありながら禁忌の術という道に外れた、外道武士の操る炎。

その怒れる業火を纏いし刀を構えた猛流は。

「っっ!」

掻き毟るような胸の苦痛に踏み出す足を止めてしまう。

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