外道武士
先の指令の際に憑依されてしまった悪霊・永久子の呪い。

内に潜む永久子の怨念が、外道武士たる猛流の肉体をも蝕む。

呪いにより思うままに動けぬ猛流。

そのような事情など、目の前の『黒の者』は知らぬ。

「にげなきゃ…にげなきゃ…」

どこを見ているのか分からない空虚な瞳で、引き摺るように近づきつつうわ言を繰り返す『黒の者』。

その口が、大きく開く。

「っっっっ…」

動けないままの猛流。

『黒の者』の喉奥で、ギチギチに詰まったゴキブリの卵が次々と孵化して幼虫が溢れ出す様が見え、吐き気を催した。

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