外道武士
関所から地上へと続く階段を登り切った所で。

「猛流」

袈裟姿の隻眼の僧侶…慈空が待っていた。

目深に被った笠を僅かに上げ、猛流の顔を見る。

「全く大した精神力だ…あの女に憑依されてよくそんな顔してられる…」

苦々しく呟く慈空。

かつて永久子に目を刳り貫かれた者としては、憑依された者に近づく事さえ憚られる。

「心配しなくていい、法師」

慈空と擦れ違い様、猛流は呟く。

「この女は俺が冥土まで連れて行く…少なくとも、もうこの女に別の誰かを殺させはしないさ」

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