外道武士
そしてこここそが、猛流の今回の指令の舞台。

『黒の者』こよりが棲みつくという建物だ。

ゆっくりとした歩調で、深夜のマンションの中へと入っていく猛流。

…既に蛍光灯やエレベーターは機能しない。

住人のいなくなったマンションに、電気は通っていなかった。

暗闇に目が慣れるまでは警戒しなければならない。

視覚以外の感覚を鋭敏に研ぎ澄ませつつ、猛流は階段を上がっていく。

少し目が慣れる頃。

猛流はマンションの壁の落書きに気付く。

赤いスプレーで書かれた、血のような文字。

『これ以上は駄目、絶対に入っちゃ駄目』

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