外道武士
肝試しに来た連中を怯えさせる為の悪戯か。

それとも、ここで『遭遇してしまった』者が他の者に宛てた警告か。

何にしても、猛流は引き返す訳にはいかない。

構わず階段を上がっていく。

靴音のみが響く、静まり返った深夜のマンション。

少し強い夜風が通路を吹き抜ける度、地の底から獣が唸るような、雄叫びのような音が響く。

幾つもの部屋…しかし施錠されて中には入れない空き部屋の続く廊下を歩く猛流。

その途中、彼はまた壁の落書きに気付く。

『本当にヤバイの、冗談じゃなく早く引き返して』

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