遊園地
気付くとチョリッスが目の前にいた。

自分よりでかいリスの着ぐるみに気圧されたのか、

「俺はいいよ」

と遠慮しようとする瞬也を先に押し出す。

「握手する。しないと絶対!後悔するよっ」

しぶしぶ手を取り、ぱふぱふと握手すると、チョリッスがよしよしと瞬也のアタマをなでた。

「……っ」

赤くなる瞬也。

「わたし茜っていうの、ヨロシクね!」

勢いよく右手を差し出すと、チョリッスは左手を出した。

「え?」

握手はふつう右と右か、左と左。握手というより、チョリッスが茜の手を取るかたちになる。

左手で茜の右手を取ったまま、今度は右手も差し出してきた。

左手も出せ、ということらしい。

チョリッスの手に左手を乗せてはじめて、気付いた。

左にはさっきのチケットの半券を握っていたのだ。

(ええと?渡しちゃって、いいのかな?)

なんとなくチョリッスにチケットを渡すと、ふと思いついて聞いた。

「どんぐり、持ってる?」

チョリッスは茜が渡した半券を、

食べた。

「ええっ?!」

二人がのけぞると、「ちゃうちゃう」というリアクションをした。

半券を入れたのは左のほっぺ。今度は右のほっぺに手を入れる。

ゆっくり取り出されたそれは、

「どんぐりだ!」

チョリッスの手の上で、金色に光っていた。


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