遊園地
中学生のお財布事情はキビシイ。

遊園地に来たからって、うかうかと散財するわけにはいかない。

のだけれど。

「はいは~い、そこのお二人さん、まさかなぁ~んにも注文しないで座ってるつもりじゃないよね~?」

長髪のウエイターが、大盛りのお盆を片手にやってきた。

「あの、実はお金が……」

「な~にケチくさいこと言ってんの~。金がないなら物々交換、ってね。はい、ドリンクとドーナツでお茶しましょ!」

「物々交換って、何と?」

さすがに手を付けずに瞬也がきいた。

「さっき良い物もらったでしょ~。お兄さんそれ欲しいなぁ~。」

「ダメです!」

「渡しません!」

「でもな~。もう日も暮れてきたし、学校帰りなら早いとこ帰ったほうがいいんじゃないのかな~?」

確かに、いつの間にか照明が灯されていた。

帰り道は真っ暗だろう。

「おなかすいてないの~?育ちざかりなのに。」

実はぺこぺこだった。授業で体育もやったしなあ。お母さん、今日のごはんは何て言ってたっけ。

「渡さないほうがいいよね?瞬也」

「多分。渡しちゃだめだ。渡さないのが正解だ」

正解って何のことだろう。

「そうだよね。渡しちゃだめだ。ってことで、はい、どーぞ」

長髪ウエイターにどんぐりを渡す。

「おい!」

慌てる瞬也。ウエイターもめんくらった。

「え、あの。……あの~?」

「ダメって言われるとやりたくなるし、おなかすいたし、欲しいって言うし、おなかすいたからあげる。」

「要するに食い気かよ!」

「だって多分ってことは瞬也にもわからないんでしょ? 案外渡すのが正解かもしれないし。」

ドーナッツにぱくつく。

「あ~あ食べちゃった、これで完全に僕のもんだよ。」

「いいよ。貰って。」

「ははは!おもしろいお嬢さんだなあ!じゃ、ごゆっくり。」

「ありがとう。で?瞬也はやく説明してよ。なんで私を誘ったの?なんで入場券持ってたの?あのどんぐりはなに?ここで私たちは何をしてるの?」


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