遊園地
瞬也はドーナツが減っていくのを見つめながら、話し始めた。

「この遊園地のどこかに、願いを叶えるスポットがあるらしいんだ。」

「ふむふむ。」

「その場所は公にはされてなくて、路地とか地下とか、そういう人目につかない場所に隠されているんだって。」

「ヒントは?」

「どんぐり。」

あ、すいません……。

「いいよもう。昔の茜を思い出してきたよ。筋金入りのあまのじゃくで、鉄の胃袋で、」

はいはいはいはい。

「じゃあほかの人連れて来ればよかったじゃん。」

「茜がよかったんだよ!」

一瞬バチッと目が合って、カッと熱くなった。

「……。」

瞬也の目線がドーナツに戻る。

「だって、すげえ秘密だし、暗号で誘い出せるのって茜だけだったし、それに、それになるべく、悩みのない奴がよかったから」

今度はサーッと熱が引いていった。

「悩みがない?」

こんな冷たい声も出せたんだ。

「私に悩みがないと思うの?」

こんな風に声を荒げることも。

まずい、と瞬也の顔が物語っていたけれど、日ごろの鬱憤やらなんやらで、どうしても言わなきゃ気が済まなかった。

「瞬也も私が『あっけらかんとしている』って思ってるの? 私が悩んじゃダメなわけ? 私なんか、亜美も助けてあげられないし、夢も書けないし、瞬也におはようも言えない!」

ほんとに出来ないことばっかりだ。勉強も運動もオールマイティだなんて嘘だ。みんながどう思おうと、私はそんな人じゃないのに。瞬也までみんなと同じように思っていたなんて。

「悪かった。ごめん。」

「瞬也まで……」

気まずい空気が流れた。


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