遊園地
瞬也はドーナツが減っていくのを見つめながら、話し始めた。
「この遊園地のどこかに、願いを叶えるスポットがあるらしいんだ。」
「ふむふむ。」
「その場所は公にはされてなくて、路地とか地下とか、そういう人目につかない場所に隠されているんだって。」
「ヒントは?」
「どんぐり。」
あ、すいません……。
「いいよもう。昔の茜を思い出してきたよ。筋金入りのあまのじゃくで、鉄の胃袋で、」
はいはいはいはい。
「じゃあほかの人連れて来ればよかったじゃん。」
「茜がよかったんだよ!」
一瞬バチッと目が合って、カッと熱くなった。
「……。」
瞬也の目線がドーナツに戻る。
「だって、すげえ秘密だし、暗号で誘い出せるのって茜だけだったし、それに、それになるべく、悩みのない奴がよかったから」
今度はサーッと熱が引いていった。
「悩みがない?」
こんな冷たい声も出せたんだ。
「私に悩みがないと思うの?」
こんな風に声を荒げることも。
まずい、と瞬也の顔が物語っていたけれど、日ごろの鬱憤やらなんやらで、どうしても言わなきゃ気が済まなかった。
「瞬也も私が『あっけらかんとしている』って思ってるの? 私が悩んじゃダメなわけ? 私なんか、亜美も助けてあげられないし、夢も書けないし、瞬也におはようも言えない!」
ほんとに出来ないことばっかりだ。勉強も運動もオールマイティだなんて嘘だ。みんながどう思おうと、私はそんな人じゃないのに。瞬也までみんなと同じように思っていたなんて。
「悪かった。ごめん。」
「瞬也まで……」
気まずい空気が流れた。
210506-2
「この遊園地のどこかに、願いを叶えるスポットがあるらしいんだ。」
「ふむふむ。」
「その場所は公にはされてなくて、路地とか地下とか、そういう人目につかない場所に隠されているんだって。」
「ヒントは?」
「どんぐり。」
あ、すいません……。
「いいよもう。昔の茜を思い出してきたよ。筋金入りのあまのじゃくで、鉄の胃袋で、」
はいはいはいはい。
「じゃあほかの人連れて来ればよかったじゃん。」
「茜がよかったんだよ!」
一瞬バチッと目が合って、カッと熱くなった。
「……。」
瞬也の目線がドーナツに戻る。
「だって、すげえ秘密だし、暗号で誘い出せるのって茜だけだったし、それに、それになるべく、悩みのない奴がよかったから」
今度はサーッと熱が引いていった。
「悩みがない?」
こんな冷たい声も出せたんだ。
「私に悩みがないと思うの?」
こんな風に声を荒げることも。
まずい、と瞬也の顔が物語っていたけれど、日ごろの鬱憤やらなんやらで、どうしても言わなきゃ気が済まなかった。
「瞬也も私が『あっけらかんとしている』って思ってるの? 私が悩んじゃダメなわけ? 私なんか、亜美も助けてあげられないし、夢も書けないし、瞬也におはようも言えない!」
ほんとに出来ないことばっかりだ。勉強も運動もオールマイティだなんて嘘だ。みんながどう思おうと、私はそんな人じゃないのに。瞬也までみんなと同じように思っていたなんて。
「悪かった。ごめん。」
「瞬也まで……」
気まずい空気が流れた。
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