遊園地
「トキヤ、アカネ」

七人の中でもひときわ年寄りの、長老のような魔法使いがやって来た。

瞬也はなぜか緊張している。

「君たちは願いを書いた。

文章に書いたということは、それだけでもう、既に効力を発揮しているものだ。

魔法は既に始まっている。

トキヤ。」

瞬也が飛び上がった。

「はい!」

「君の願いは三つだね。」

「はい」

「どれも切実なようだね。」

私は、長老魔法使いの目が、すこし細められたような気がした。

「アカネ。」

「あ、はい」

「君はここへ来た意味をよく説明してもらっていないのだね」

「……そうなんです!」

私はやっと、疑問をぶちまける機会を得た。

「もう、わけわかんなくて! 瞬也はいきなり遊園地に誘うし、来たら来たでみんな仕組んだみたいに色々起きるし、あげくにこんなトコ来ちゃうし! そもそもなんのために……」

「なんのために。トキヤはまだそれを言っていない。」

「……ええと。」

「アカネはわけもわからず『こんなトコ』まで来てくれた。」

そういえば、私はなんで瞬也について来たんだろう。

わけわかんないコトばっか起きて、瞬也はとりあえずってなにも説明してくれないのに。途中で帰ろうとは思わなかった……

「なにが一番かはわからないね。

でも奥底の深い因果が君たちを結びつけていることは確かだ。

『なんのために』アカネを連れて来たんだい。

自分で言わなくてはいけないよ」

「……ええとっ」

「『魔法を手に入れるため』」

瞬也と長老がおどろいて私を見た。

でも、いちばんびっくりしているのは私だ。

「あ、ごめん」

ぱっと出た言葉が何か二人に作用したらしい。

「……なあるほどね。いい人材を選んだな。トキヤ」

まじまじと見つめられても、私からはなにも出てこない。

だったら今のはなんだったんだろう?

「いいだろう。わたしから説明してあげよう。特別サービスだぞ。」

まったく、どこでこんなにこじれたのかねぇ君たち二人は、と言われて私たちはそっぽを向いた。


210512-1


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