遊園地
気付くと私たちは、遊園地の中のカフェテラスに座っていた。

「どうだった?おかえり~。」

あの長髪ウエイターが顔を覗きこんだ。

「どうって……なにがなんだかわからないっ」

私は頭をかかえたけれど、長髪ウエイターはにこにこしている。

「そうかい?でも君たち、さっきと雰囲気違うみたいだ。」

「そう?」

「そうかな」

私たちはとぼけた。

「遊園地ってねえ、ときどき、あんなふうに変なことが起こるんだよね~」

きみたち若いから、特に。

年寄りくさいことを言うけれど、彼だって相当若そうだ。

「そんなきみたちに、プレゼントがあるよ~ん」

長髪ウエイターは、手を差し出した。その手にはなにもないように見えた。

瞬也がその手を触って、息を呑む。

「これは……!」

「遊園地の年間パスだよ。ゴールドでも、シルバーでもなく。透明なカードだ。」

なくすとまずいよ、と私の手にも載せてくれた。

たしかに、見えないけれど、ちゃんと感触はある。とても不思議だった。

「とくにきみ、無くしそうな顔してるし。気をつけて」

「うんうん、確かに。」

「はあっ?!どんな顔よ!」

「でも、悩みがなさそうってのはゴメン。」

いきなり謝られた。

「ちょっと、自分が悩みだらけで、なんかそんなんで、そう見えたんだ。ごめん。

でももう、違うって、わかった。入れ替わってみて、本当にそれがわかったんだ。」

「……うん。私も」

あのとき、瞬也の中に重いものを感じた。

彼の中には、内容こそわからないけれど、悩みと、そして決意があった。

今回のことも、きっとそれに関係している。

だから、今日はこれで勘弁してやろうと思った。


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