遊園地
気付くと私たちは、遊園地の中のカフェテラスに座っていた。
「どうだった?おかえり~。」
あの長髪ウエイターが顔を覗きこんだ。
「どうって……なにがなんだかわからないっ」
私は頭をかかえたけれど、長髪ウエイターはにこにこしている。
「そうかい?でも君たち、さっきと雰囲気違うみたいだ。」
「そう?」
「そうかな」
私たちはとぼけた。
「遊園地ってねえ、ときどき、あんなふうに変なことが起こるんだよね~」
きみたち若いから、特に。
年寄りくさいことを言うけれど、彼だって相当若そうだ。
「そんなきみたちに、プレゼントがあるよ~ん」
長髪ウエイターは、手を差し出した。その手にはなにもないように見えた。
瞬也がその手を触って、息を呑む。
「これは……!」
「遊園地の年間パスだよ。ゴールドでも、シルバーでもなく。透明なカードだ。」
なくすとまずいよ、と私の手にも載せてくれた。
たしかに、見えないけれど、ちゃんと感触はある。とても不思議だった。
「とくにきみ、無くしそうな顔してるし。気をつけて」
「うんうん、確かに。」
「はあっ?!どんな顔よ!」
「でも、悩みがなさそうってのはゴメン。」
いきなり謝られた。
「ちょっと、自分が悩みだらけで、なんかそんなんで、そう見えたんだ。ごめん。
でももう、違うって、わかった。入れ替わってみて、本当にそれがわかったんだ。」
「……うん。私も」
あのとき、瞬也の中に重いものを感じた。
彼の中には、内容こそわからないけれど、悩みと、そして決意があった。
今回のことも、きっとそれに関係している。
だから、今日はこれで勘弁してやろうと思った。
210517-1
「どうだった?おかえり~。」
あの長髪ウエイターが顔を覗きこんだ。
「どうって……なにがなんだかわからないっ」
私は頭をかかえたけれど、長髪ウエイターはにこにこしている。
「そうかい?でも君たち、さっきと雰囲気違うみたいだ。」
「そう?」
「そうかな」
私たちはとぼけた。
「遊園地ってねえ、ときどき、あんなふうに変なことが起こるんだよね~」
きみたち若いから、特に。
年寄りくさいことを言うけれど、彼だって相当若そうだ。
「そんなきみたちに、プレゼントがあるよ~ん」
長髪ウエイターは、手を差し出した。その手にはなにもないように見えた。
瞬也がその手を触って、息を呑む。
「これは……!」
「遊園地の年間パスだよ。ゴールドでも、シルバーでもなく。透明なカードだ。」
なくすとまずいよ、と私の手にも載せてくれた。
たしかに、見えないけれど、ちゃんと感触はある。とても不思議だった。
「とくにきみ、無くしそうな顔してるし。気をつけて」
「うんうん、確かに。」
「はあっ?!どんな顔よ!」
「でも、悩みがなさそうってのはゴメン。」
いきなり謝られた。
「ちょっと、自分が悩みだらけで、なんかそんなんで、そう見えたんだ。ごめん。
でももう、違うって、わかった。入れ替わってみて、本当にそれがわかったんだ。」
「……うん。私も」
あのとき、瞬也の中に重いものを感じた。
彼の中には、内容こそわからないけれど、悩みと、そして決意があった。
今回のことも、きっとそれに関係している。
だから、今日はこれで勘弁してやろうと思った。
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