遊園地
「……よう。」

「……うん。」

さっき亜美にしていた返事より、ずっと低い声になっているけど、自分じゃどうしようもない。いつのまにか、イマイ並みに苦手な奴になっていた。

小学生の頃は顔を見るなり「おはよう!」と背中をばんばん叩いていたのに、それができなくなったのはランドセルじゃなくなったからだろうか。それとも、学ラン姿が別人みたいだからだろうか。

「これ。」

折り畳んだルーズリーフを渡され、心当たりはなかったが、とりあえず黙って受け取った。

「……」じーっと紙を見ていれば説明が降ってくるかと、いつまで待っても何もなし。

しょうがないから顔をあげると、瞬也は無表情で自分を見ていた。

片手も、手渡す時のままの格好で固まっている。

「なに?」怪訝な顔で聞くと、片手がすこし動いた。

ピストルの形をつくった。

「ばん!」

「うううっ!」

やってから、茜はしまったと思った。

つい、ノッてしまった。

1-Eにどっと笑いが起きる。

「じゃーな」

無表情のままきびすを返したが、背中がるんるんしている、ように見える。

「じゃ、あ、なっ!」

敏感に察して途中からは駆け足で逃げようとする背中を、思いっきり叩いてやった。


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