遊園地
「今日はみんなに、『三年後の自分へ』という作文を書いてもらう」

 えーっ、という声があがる。歴史の内村が休みとかで、自習代わりの作文ということらしい。

 作文は苦手ではないが、

(三年後の自分……)

 苦し紛れにしては厄介な課題を出されたものだ。

 副題は「~僕(私)の願い~」だそうだ。

「みんな夢あるだろ」

 担任は、おおざっぱが売りの体育教師、石垣。人気はあるが、

「さんざん勉強ってせっついておいて、今更夢は何だって、ひどくね?」

 そんな声もちらほら上がった。

「だったらまずは小さな願いから書いてみろ。自分がわかるなら箇条書きでもいいぞ。卒業する時に返すから、先生は読まないから思う存分書いてみろ。」

 亜美を見ると、なにやらせっせと書いている。彼女には「飲食店を開く」という夢があるのだ。

 小さな願いか。

 それなら書けそうだ。

「日常の些細な願いは大事だぞ。な、本堂」

「はぁ。」

 イキナリ呼ばれたので間抜けな返事になった。石垣はなぜだか「な、本堂」とよく振ってくる。たぶん、「あっけらかんとしている」ように見えるせいなのだろうけど。


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