遊園地
意外と海風が強かった。まだ明るいとはいえ、夕方はやはり肌寒い。
茜が遊園地に着くと、瞬也は既にそこに居た。
「よう。」
「……うん。」
やっぱりなぜかぶっきらぼうになってしまう。
自分で自分が変えられない。こうしたいと思っていることと実際の行動が伴わない。
伏し目がちになった目に飛びこんできたのは、瞬也の手に握られた、二枚のチケットだった。たぶん入場券だろう。
気付いたことを隠しておくのは苦手なので、チケットを指さし
「それ使うの?」
と聞いた。
「そう。これを手に入れるのに、ものすごく苦労したんだ」
恩着せがましいことを言いながら、チケットを一枚渡された。風に飛ばされないようにしっかりと握る。
「とりあえず、理由はあとにして、中に入るからな。」
敵陣に乗りこむかのような口調で言った。
瞬也の隣のエントランスから入ろうとすると、
「そっちじゃなくてこっちだって」
慌てて引き戻された。
変わんないじゃん、べつに。と思ったが、「エントランスは端の端」とぼそりと唱えたのが聞こえたので黙っておいた。
温和しくチケットを出すと、スタッフの人から半券を返された。
「行ってらっしゃい」
あっさり入り口を通る。
うっかり冒険のはじまりに手を出したとも気付かずに。
210502-1
茜が遊園地に着くと、瞬也は既にそこに居た。
「よう。」
「……うん。」
やっぱりなぜかぶっきらぼうになってしまう。
自分で自分が変えられない。こうしたいと思っていることと実際の行動が伴わない。
伏し目がちになった目に飛びこんできたのは、瞬也の手に握られた、二枚のチケットだった。たぶん入場券だろう。
気付いたことを隠しておくのは苦手なので、チケットを指さし
「それ使うの?」
と聞いた。
「そう。これを手に入れるのに、ものすごく苦労したんだ」
恩着せがましいことを言いながら、チケットを一枚渡された。風に飛ばされないようにしっかりと握る。
「とりあえず、理由はあとにして、中に入るからな。」
敵陣に乗りこむかのような口調で言った。
瞬也の隣のエントランスから入ろうとすると、
「そっちじゃなくてこっちだって」
慌てて引き戻された。
変わんないじゃん、べつに。と思ったが、「エントランスは端の端」とぼそりと唱えたのが聞こえたので黙っておいた。
温和しくチケットを出すと、スタッフの人から半券を返された。
「行ってらっしゃい」
あっさり入り口を通る。
うっかり冒険のはじまりに手を出したとも気付かずに。
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