遊園地
意外と海風が強かった。まだ明るいとはいえ、夕方はやはり肌寒い。

茜が遊園地に着くと、瞬也は既にそこに居た。

「よう。」

「……うん。」

やっぱりなぜかぶっきらぼうになってしまう。

自分で自分が変えられない。こうしたいと思っていることと実際の行動が伴わない。

伏し目がちになった目に飛びこんできたのは、瞬也の手に握られた、二枚のチケットだった。たぶん入場券だろう。

気付いたことを隠しておくのは苦手なので、チケットを指さし

「それ使うの?」

と聞いた。

「そう。これを手に入れるのに、ものすごく苦労したんだ」

恩着せがましいことを言いながら、チケットを一枚渡された。風に飛ばされないようにしっかりと握る。

「とりあえず、理由はあとにして、中に入るからな。」

敵陣に乗りこむかのような口調で言った。

瞬也の隣のエントランスから入ろうとすると、

「そっちじゃなくてこっちだって」

慌てて引き戻された。

変わんないじゃん、べつに。と思ったが、「エントランスは端の端」とぼそりと唱えたのが聞こえたので黙っておいた。

温和しくチケットを出すと、スタッフの人から半券を返された。

「行ってらっしゃい」

あっさり入り口を通る。

うっかり冒険のはじまりに手を出したとも気付かずに。


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