Voice
家に着くなりスナック菓子の袋を力一杯開けた。勢い余って飛び出したスナック菓子がフローリングに散らばる。
散らばった菓子を鷲掴みにして口の中へと押し込むと、涙を溢しながらそれを噛み砕いて呑んだ。
本当は痛いと思っている。
でも言葉に出来るほど、人に弱さを見せたことがない。恋人になった男にも、そして女友達にも。
いつからこうなったのかは分からなかった。普通の家庭で育ち、普通に生きていたのだ。どのタイミングでどの出来事が切っ掛けなのか本人も分からない。ただあるのは、負けてはならないという高いプライドだけだった。
一頻り咀嚼して飲み込んだお菓子とジュースは、一時の安らぎを真紀に残すとその本来の姿を現す。
心が落ち着けば太るのが嫌だと立ち上がり、急いで冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すとトイレへ駆け込んだ。
薄いピンク色に統一されたトイレは、真紀の手で乱暴に蓋を開けられる。
右手を思い切り口の中へと突っ込み、胃の中のお菓子を吐き出した。