ボレロ - 第二楽章 -
「近衛とイタリアの経済界はつながりがある。
ペローニ会長にコンタクトを取ることも難しくはない。
知弘さんが困っていると聞いて、俺が間に入った……
と言えば聞こえはいいが、そこにある期待を込めた。
須藤社長に、俺を認めてもらえるんじゃないかと考えた。
大事な日と言ったのは、俺にとって運命を左右する日になるかもしれない、
そういう意味だよ」
「それは、私たちのため?」
「それだけじゃない 『SUDO』 は、いずれ君が跡を継ぐことになる。
そのとき不安材料があっては困るだろう。
ペローニの会長に会ったのも、そのための一歩だと思ってもらえればいい。
君は、仕事に手応えを感じはじめている、経営にも興味があるはずだ。
自分の手で何かしたいと思わないか」
「思うわ。自分の力を試したい、やってみたいこともあるわ。
だけど現実的に無理よ。
私が跡を継ぐといっても、実質は私のパートナーか取締役が
経営していくことになるでしょうね」
珠貴……と、目の前にいる私へ呼びかけ、意を決した顔が向けられた。
「やってみたいと思うならやればいい。
やりもしないうちにあきらめるなんて、君らしくない。
来るべき時がきたら、君がトップに立てばいい。俺が全力で君を支える」
宗の言葉は、私に強い衝撃をもたらした。
この人は、なんと大胆なことを考えるのだろうか。
私が小さなことにこだわり鬱々と過ごしていた頃、彼はきたるべき将来を見据
えて動き出していたのだ。
「私に、できると思う?」
「できる。思うままにやればいい。俺も全力を尽くす」
「私と一緒に戦ってくれるのね」
「戦うか……同じことを考えるんだな。もちろんだよ」
俺が全力で君を支える……
彼は私との将来を明確にし、最高の愛情を示してくれた。