ボレロ - 第二楽章 -


宗がシナリオを書き、信頼する人々に頼み計画を実行したのかと思っていたが、

そうではなかったようだ。

むろん宗も関わっただろうが、ほかの方それぞれが自主的に参加して進められ

たことだった。

いやぁ、楽しかったよと、みなさんが口々にいう。

「男は一つの目標に向かって突き進むことで、結束を強めるものだ」 と知弘

さんが言うように、以前にもまして、彼らのつながりは強く深くなっているよ

うに見えた。


けれど、それは女性も同じこと。

今日の日のために、 集まってパーティーの企画をしたのは私たち女性メン

バーだった。

美那子さんが 「自分のための会ですから楽しまなくちゃ」 と張り切り、

持ち前の行動力でみなさんをまとめてくださった。

女性たちにもそれぞれ得意分野がある。

大まかな企画が出来上がると、真琴さんと佐保さんが各方面へ手配をし、蒔絵

さんはインテリアや部屋のレイアウトを一手に引き受けてくれた。

紫子さんと美野里さんは 「私たちは時間の自由がきくので」 とこまごまと

した用事を引き受け、私はみなさんの連絡役と美那子さんの補佐についた。


何度も顔を合わせるうちに、立場を超え見えない垣根を取り払っていった。

私と蒔絵さんは仕事では上下関係があるが、ここでは友人だった。

宗の秘書の真琴さんも、これまでは私に遠慮がちだったが、 

「名前で呼んでくださいね。私も真琴さんとお呼びしたいので」 とお願いす

ると、戸惑いながらも承知してくれた。

今回初めてお会いした霧島さんの婚約者である美野里さんも 

「みなさんとご一緒できて嬉しくて」 と喜んでくださった。

彼女は宗の秘書で、後輩の平岡さんの従姉妹にあたる人でもある。

社交的な紫子さんがそれぞれの橋渡しとなり、美那子さんを中心に親しくまと

まっていった。 


男性陣が 『シロナガスクジラ撃退作戦』 を進めるころ、私たちもパー

ティーの企画に奔走していた。

まさか、彼らがそんなことを企てているとは知らず 「男の方は気楽でいい

わね」 なんて噂をしながら、こちらはこちらで楽しい時間を過ごしていたの

だった。





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