ボレロ - 第二楽章 -
二週間ぶりに会う宗は、疲れた様子がみえるものの思っていたより元気そう
だった。
君に会わせたい人がいるんだ、彼らが少し遅れるらしいからここで待とうと、
ウェイティングルームに通された。
どなたがいらっしゃるの? と聞いても、会えばわかるからと教えてはくれな
かった。
宗の話は尽きることがないのではないかと思えるほど続き、ふだんおしゃべり
ではない人が話し出すと
こんなにも語るのかと驚くばかりだった。
リポーターのしつこさは私が見聞きして知る情報を大きく超え、個人情報の
漏洩は止められないのだと知らされた。
時には礼を失した問いかけに、怒りを爆発させたいと思うこともあるそうだが、
自分の立場を忘れるなとの父の忠言を思いだして、ぐっとこらえてるよと
泣き笑いのような顔を見せた。
「俺は一度失敗しているからね。もうあんな思いはこりごりだよ。
口は災いの元とはよく言ったものだ。
失敗を繰り返さないために、彼と協定を結んだんだ おかげで仲良くなったよ」
「協定? 彼って?」
宗の視線の先に目を向けると、私が毎日テレビ画面で出会っていた人物が
入ってくるところだった。
「お待たせしました」
画面で見るよりおっとりとした顔の男性は、沢渡ですと名乗り、隣には小柄な
女性がにこやかに立っていた。