恋は風のように【短編】
「あ……えっと……あの、もしかしてどこかで会いました?」
相手の反応に、私が焦ってしまう。
「だ、だとしたらスミマセン、あの……!」
「いや、」
申し訳ないのがいよいよ増してきて早口になってきた私の言葉を制して、相手はやっと口を開いてくれた。
口に手を当てて、考えるように目を泳がす。
色素の薄い茶色な瞳だ。
「考えてみれば、俺、名前を名乗ってない。それに、君の名前も聞いてないや……。これじゃ覚えてなくても仕方ねえよな」
なっさけねえの。
そう呟きながら少年の見せた表情に、私はドキッとした。
拗ねたような、悔しそうな、その表情に。