恋は風のように【短編】
「じゃあ。貴方の御名前は?」
何かを考える前に、私はそう言っていた。
驚いたように此方を見てくる相手の視線がどうしたって照れ臭く感じて、つい顔を背けてしまう。
「私、ミオって言います。貴方は?」
普段、こういうことを男子に聞くようなことをしないから、余計に恥ずかしくなってきて。
あー、私、今、顔赤いんだろうなーなんて思いながら。
頭の片隅では、(今日のお弁当、何が入っているのかな……)なんて現実逃避をしていた。
「ケイタだよ」
すくっと少しだけ笑い声がして、少年……ケイタは答えてくれた。
「ケイタ、ね。今度こそ覚えておくよ。じゃあそろそろ、学校にいかなくちゃだから……」