恋は風のように【短編】
「ヒトメボレしたんだ、君に」
「なっ……、」
やっと出てきてくれた音は、何の意味も持たない音だった。
心臓の音が、五月蝿い。
ケイタに聞こえていないだろうかなんて怖くなっちゃうくらいに、早鐘を打っていて。
自然、握っていた両手に力が込められる。
「いつ、どこで……かは、言わないよ。良かったら思い出して欲しいんだけどな……、まぁ、でも自分からは言わないことにする」
そう言って、くるっと身を翻したケイタは、もう学校に向かうようだ。
固まっていた私は、はっとして口を開く。
「ひ、ヒント!」
「……え?」
「ヒントちょうだい!思い、出すから!」