ストロベリーショートケーキ
ほんとうの君へ
安達の胸ぐらを掴んだ、花井くんと目が合った瞬間。

あたしは迷わず、となりの笑花に話しかけた。



「……笑花、ごめんこれ持ってて」

「え、トーコ?!」



持っていた教科書やペンケースを押しつけて。あたしは戸惑う彼女の制止の声を背中に受けながら、騒ぎの中心になっているふたりに近づいた。



「……花井くん!」

「え、」

「トーコ……?」



安達があたしの名前を呼ぶけど、それには目配せだけを返して。

うつむく花井くんの手をとり、そのまま歩き出す。

驚いた顔の彼は、それでも抵抗を見せずについて来てくれた。


そして目的の保健室へとたどり着くと、あたしは花井くんに椅子に座るよう促して、自分は棚の方に足を向けた。

その時点で、もう、あたしの涙腺は言うことをきかなくなっていて。



「……ッ、」



だめ。出るな涙、出すな声。

棚の引き出しを開けながら、あたしは必死に唇を噛みしめる。
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