TABOO~それぞれの秘密~
「あーあ。手元まで一流のランナーに見えるな」
春さんの呆れたような、嬉しそうな声。
彼の視線は、私が今日初めて身に着けたマラソン用の時計。
この時計も、店頭では一番高価なもの。
走った距離はGPSによって記録され、心拍数の確認もできる。
春さんの腕にも同じ時計がスタンバイ中。
「靴も時計もお揃いで、俄然やる気が出ます」
「格好だけはトップランナーだな」
くすりと笑い、私の頭をなでた春さんは、真面目な表情を作ると。
「彼氏と、時計はお揃いじゃないのか?」