TABOO~それぞれの秘密~
「でも私、彼女を傷つけた」
低い声で呟くと、私の全てを掌中に収める決意に溢れる瞳が、私を射る
「俺に付き纏っていた女に殺されかけたのはお前だろ?
あの女のナイフが誤って、あの女の腹に刺さっただけだ」
必死な声は、私の心を揺らすけれど
「殺してたかもしれない」
「殺してないし正当防衛だと認められてる」
でもあの時、彼女に消えて欲しいと願う自分がいた
「一生苦しむなら、原因を作った俺の側で苦しめ。
お前を抱きしめて一緒に苦しんでやる」
「愁……」
「ようやく、俺の名前、言ったな」
3年ぶりに口にした愛しい人の名前
人を傷つけた私に許されるのだろうか
「あの女は別の男と結婚して幸せだ。お前も俺と幸せになっていい」
弁護士に聞いたという事実にほっとして、途端に意識が遠くなる
「隣で見守るしかできないのは、つらかった」
愛しい人の腕の中で、切ない声が、聞こえた気がした
fin