竜の唄
「本当に、いいのね?」
確かめるように、ゆっくり問いかける。
その問いに対してリアスは、落ち着いた声で答えとも言えぬ答えを返した。
「…さあな。まあ選ぶのはアイツだ。騎士を目指しているわけでもねえし」
「そうなの?」
「ああ。それに、アイツが放っとくとも思えねえ」
「うん、優しそうだったわ。惚れちゃうかもしれないわね」
「どっちがどっちに?」
「さあ」
クスクス、と笑って、イヴは身を翻した。
銀髪が動きに伴い、大きく揺れる。
それを目で追いつつ、リアスも同じく立ち上がって今度は彼が彼女を見下ろした。
イヴは鍛錬場を見渡しながら、黒いスカートについた埃を払う。
「それにしてもここ、隅っこの掃除がなってないわよ。汚れちゃったわ」
「騎士学部は男が多いからな。どうしてもそこはおろそかになるんだろ」
「そう。で、なに?何か言いたいことがありそうよ」
「お前はいいのか?」
急に投げかけられた言葉に、イヴは目を丸くして驚いた。
それからやんわり微笑み、ゆっくりとした動作で頷いて、スカートの前で自らの白い手と手を握り合わせる。
「ええ。だって、あの子の運命だわ。それがどう動こうとも、私はあの子を全力で支える」
「…そうか」
「あなたが真剣な顔してると馬鹿みたい」
「おいやめろ。てめえふざけんな」
あら怒った?と悪戯に笑うイヴに、リアスはため息をこぼした。
そのまま扉まで歩いていき、閉じておいたそれを開ける。