竜の唄
「カノン、お前これももっかいやるのか?」
「そーだよー! まあ実技の方は余裕のよっちゃんなんだけどね~」
絶賛留年中の彼女に問えば、そんなあっけらかんとした答えが返ってきた。
てへへ、とのんきにウインクしているが、ぶっちゃけ笑えない。
「ああ、俺ももう一年にならないようまじで勉強どうにかしなきゃ…」
「カルマに教えてもらったら~? あたしもそうするよ!」
「それでも去年ダメだったんだろ?」
「ん~、でも2年も勉強したらもういける気がする!」
一緒にお勉強しよ~、と朗らかに言う彼女に、なんだか気が抜けてイアンは苦笑した。
カルマはよくカノンのことを散々言っているが、それでも憎めないところは、こうやって悩みなんて吹っ飛ばしてしまうところにあるのだろう。
「おう、じゃあ今度一緒に…」
「イ・ア・ン・バー・ン・ズ?」
頑張ろうぜ、と言おうとしたところで、後ろからドスの効いた恐ろしい声。
お?、と振り返ると、そこには仁王立ちしてイアンを睨みつける副学部長レレノアがいた。
ひっ、とすくみ上ったイアンは、彼女に首根っこをつかまれこわごわ見下ろす。